ひかり塾BLOG

『NASAより宇宙に近い町工場』

date.2016.05.29

という本を読みました。 NASA! 宇宙! 工場! タイトルからいかにも宇宙開発の理系向きって感じがしますが、宇宙開発についてどうのと書いてある分けではなく「夢をあきらめない、やればできる」というな内容になっていました。これだけだとありきたりな言葉のように聞こえてしまいますが・・・うまく言葉にできません。すみません(苦笑)。

著者植松さんの想いに圧倒されながら一気に読んだこの本の中でも特に印象に残ったのが、
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この世にすでにある仕事の中から夢を選ばなければいけないんでしょうか。
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この言葉を見たとき少し読むのを止めて考えました。普段から授業を通して生徒に「あれしろ。これしろ。」と当然のようにやっています。指示を出して生徒を決まったレールに乗せていくことに違和感を感じることはないですが、自分の中の当たり前を押し付けすぎてその先の可能性も狭めていないかと考えさせられました。「この仕事をしなさい」とまでは言いませんが、授業だけでなく面談や雑談でもいろいろ話すので何かしらそれに近いことをやってしまってはいないだろうかと。(思いつきませんでしたが、こういうのはきっと言う側は気づかないですよね。)


朝から学校へ行って、放課後は部活をやって、夜は塾へ。これだけでも子どもたちはだいぶ決められたレールの上を進んでいます。この中でこのレールの先に自分で自由に未来を選択している子どもたちがどのくらいいるのでしょうか。

別にこの状況を悲観しているわけではないですが、そう考えると生徒たちが決められたレールを進んで塾を卒塾して、学校を卒業して、いよいよ社会に出るぞというときにそのレールの先はどのくらい分岐があるのか。分岐=可能性と、とらえてもいいと思います。どのくらいの可能性を見出せているのかと。生徒自身で次の道を選ぶ力がついているのか。また私はその可能性を広げられているのか、もしかしたら狭めてないだろうかと。・・・こう思うと少し不安になってきました(苦笑)。


不安になる理由としては生徒への評価ですね。塾講師なので成績での評価をすることは当然数多くあります。でも人それぞれ良いところは違うのだから、勉強以外での評価もたくさんあるはずなのに、なかなかそれをしてもらえる機会は少ないんじゃないかと思いました。今は勉強が得意な子も、高校生になってなお得意であり続けられるかは分かりません。そうなるとレールの先に可能性を見出せなくなるんじゃないかなと。そこを考えると生徒たち自身が勉強だけで自己評価してしまわないように、何かできることをやっていかないとなと思います。(“勉強ができるようになって自信がつく”以外の手も欲しいんです。)


植松さんは「どうせ無理」という言葉をこの世からなくしたいと言っています。「どうせ無理」より「だったら、こうしてみたら?」とプランAがダメならプランB。プランBがダメならプランCとできるための手を考えよう、と。

可能性を値引きせず、そこを広げられるようにと考えさせられるとても良い本でした。

 

今回は書きながらいろいろ考え、不安な気持ちまで出てきちゃったのでかなり疲れました(笑)でも途中、楽しかった話を思い出だしたのでひとつ。

3月に3年生になる生徒と面談をしたときの話です。受験についての話を終えて、雑談に発展。その子はひどい花粉症で、ティッシュ箱持参で塾に来ます。1コマの授業中に1箱なくなりそうな勢いで、こちらから見ていても相当つらいだろうな、と。本人曰く、「学校一ひどい花粉症患者」。

で、雑談はそんな花粉の話をしていたのですが、そこから「今飲んでいる薬が全然効かないから、花粉に効く薬をつくる!」と自分で薬をつくると言い出しました。製薬会社立ち上げちゃうか。「社員は全員花粉症の人。花粉症で苦しんだ経験のある人じゃないと採用しない!」と、超偏った採用基準!「苦しみを知っている人でないと薬をつくる情熱に欠ける。」だそうです(笑)。でも、確かに。その面子であれば特効薬ができそうですね。

15分くらいで終わるはずだった面談があっという間に1時間を過ぎてしまいました。とても熱く語ってくれて、時間を忘れてしまうくらいお互い楽しくなっていました。時間に気づいてもう帰らないといけなかったのですが、「まだ話し足りない」と彼の花粉への想いは相当です(笑)。

彼が将来花粉に効く薬をつくることになるのかどうかは分かりませんが、この時の情熱はもち続けて欲しいなと思います。これを値引きせず、広げていけるようになりたいですね。

“社員全員花粉症患者の会社”は結構楽しみにしています。